蒔絵筆

蒔絵を描くためには、太い線、細い線、面を塗り込む等、穂先の長さ、太さの違ういろいろな種類の筆が必要です。
「弘法筆を選ばず」と申しますが、蒔絵師さん達は、とても筆にこだわっています。
穂先には動物の毛が使われることが多いです。中でも細く長い線を描く筆には、ねずみの毛が使われています。
ねずみの中でも、特に米を輸送する船にいるねずみ、または、琵琶湖の葦の生えているところに住んでいるねずみ、の毛が一番良いらしいです。なぜなら、コンクリートなどの硬い地面をはい回るねずみの毛は毛先が擦れてしまっていて、船の中や葦の生えているような湿地に生息しているねずみは毛先が痛んでいないから、なのだそうです。
漆は粘度が高いので、細く長い線をひくのは、途中で漆が擦れたり途切れたりしてなかなか難しいのですが、毛先が擦れていないねずみの毛には毛先に「水毛」が残っていて、水毛は適度に漆を含むので、途中で擦れずに細く長い線を引けるのです。

今ではもう、そういうねずみが手に入らなくなって、蒔絵の筆を作る職人さんも少なくなってしまって、蒔絵師さんたちは今ある筆を大切にしつつ、新しい材料の筆を探し求めていらっしゃるとか…

輪島塗には100何種類ともいわれる工程があり、それぞれを専門として作業をする分業制でやっていることが多いのですが、その工程の一つである蒔絵をとってみても、蒔絵筆用のねずみを取る人、その毛を加工して筆を作る人、漆を研ぐ炭を焼く人、下書きの絵を器物に写す和紙を作る人、等々 本当に多くの方の手によってお道具が作られています。
輪島塗はまさに一つ一つの工程で使うお道具を作る人びとの技の積み重ねと、その道具を使う蒔絵職人さんの技によって、良い品物が作られているのです。


穂先を好みの長さに調節できるように取り外せる仕組みになっています。

細い筆は赤軸、根朱はねずみのこと。1本1本手作りのため、使い勝手にも違いが出るので、多めに購入して使いやすいものを選別するそうです。数十年前でこの価格。今ではもう手に入りません。

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